猫の脂肪肝症の最新情報 〜飼い主から獣医師まで理解すべきポイント〜


 

猫の脂肪肝はみんなに知っておいてほしい重要な病気

 

猫の脂肪肝症(肝リピドーシス)という病気をご存知ですか?

 

動物夜間救急ではこの病気で来院する猫がとても多いです。

 

仕事終わりに帰宅したらぐったりしていたというパターンが多く、

食欲不振を数日間放置していた結果、急変してしまうのです。

 

ミネソタ大学の研究によると、

猫における肝臓の病気の約半分が脂肪肝に相当します。

 

約25%は腫瘍、約10%が炎症なので、猫の肝疾患において脂肪肝の発病率はとても高いのです。

 

猫での発病率は高いのですが、犬ではほとんど確認されていません。

 

ここでは動物関係者だけではなく、

飼い主さんにも知ってほしい「猫の脂肪肝症(肝リピドーシス)」の情報をお伝えします。

 

 

猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とはどんな病気なのか?

 

猫の脂肪肝症は1977年に初めて報告されました。

 

飢餓状態のときに脂肪分解が急速におき、劇的に血中遊離脂肪酸濃度が上昇します。

 

その遊離脂肪酸が肝細胞にとりこまれ、その後中性脂肪として、

肝細胞に蓄積されるか、VLDL(超低比重リポ蛋白)にとりこまれます。

 

脂肪肝症は肝臓に脂肪が蓄積する病気です。

 

その組織学的所見は実験では絶食を始めてから2週間以内に発生しますが、

実際の臨床例では数日で発生することが多いです(2〜7日)。

 

つまり、数日以上の食欲低下である猫において、摂食量を維持することがとても大切になります。

 

 

 

猫の脂肪肝症を誘発するリスク

 

基礎疾患から食欲低下がおき、そこから脂肪肝症につながるケースが多いです。

 

・肝疾患(胆管炎も含む)

・膵炎

・炎症性腸疾患

・腹膜炎

・腫瘍

 

などです。

 

また、健康な猫でも、摂食量が不充分であるために脂肪肝症につながるケースがあります。

 

・飢餓状態(食事量の大幅な不足)

・食事変更による摂食量低下

・ストレス性の食欲低下

 

 

 

猫の脂肪肝症における臨床的特徴

 

多くの場合、食欲不振や嘔吐下痢などで気づくことが多いです。

 

黄疸(口腔内や白眼の部分の黄色化)に気づいて来院される飼い主さんもいます。

 

検査上では、肝臓の数値(ALT, AST, ALP)や血中ビリルビン値の上昇があります。

 

白血球や非再生性貧血、凝固異常がみられることもあります。

 

重症例では、低血糖や低アルブミン血症、血中アンモニア値の上昇などが認められる。

 

レントゲン検査では肝腫大が認められ、超音波検査では高エコーのうつりが認められます。

 

特に、鎌状間膜や大網に脂肪の蓄積を認めます。

 

FNA(穿刺吸引)細胞診は脂肪肝症の診断にある程度の正確性があるとされています。

 

ただし、全身麻酔や生検は脂肪肝症の早期治療段階では禁忌の場合があります

 

慎重に治療する必要があります。

 

 

 

猫の脂肪肝症の効果的な治療方法

 

低血糖状態の場合、糖補給を行います。

 

初診時に経鼻食道チューブを留置し流動食を摂取できるようにします

 

嘔吐がある場合は制吐薬や制酸剤などの利用が認められます。

 

初診から数日間は輸液療法や流動食のチューブ給餌によって脱水の管理や栄養支持を行います。

 

注意するべきは、電解質のモニタリングです。

 

定期的にKとPの血中濃度をモニタリングします。

 

ビタミンB12を定期的に皮下注射することもあります。

 

 

栄養支持の重要性

 

特に重要なのは「栄養支持」です。

 

大きな基礎疾患がない場合、栄養支持を早急に開始すれば90%以上の回復率が期待できます。

 

また、さらに重要なのは「蛋白質の維持」です。

 

適切な蛋白質は病気の回復にとても重要です。

 

高アンモニア血症でない限り、摂取カロリーの33〜45%を蛋白質で与えることが必要だというデータもあります。

 

 

栄養支持のための経鼻チューブ留置

 

栄養チューブは

 

・経鼻食道

・食道瘻

・胃瘻

・十二指腸瘻チューブや空腸瘻チューブ

 

が利用できます。

 

これらの中で、もっとも患者の負担が少ないのが「経鼻食道」です。

 

鼻腔への負担がありますが、麻酔や鎮静はほとんど不要で、手術ではありません。

 

留置が迅速で高度な道具や技術を利用しない点もメリットといえます。

 

しかし、経鼻食道チューブが禁忌となる場合もあります。

 

・重度の嘔吐

・重度の口腔および食道疾患

・咽頭反射が弱いまたは消失している

・昏迷または昏睡状態

・カラー装着なしでの自宅利用

 

これらに注意したうえで、チューブ留置を行いましょう。

 

 

栄養支持のための投薬

 

食欲増進のためのくすりもあります。

 

ミルタザピン(レメロン)の経口投与が適応ですが、経口投与なので何れにせよ

 

輸液療法や食道チューブで状態安定化を図ってからの投薬となります。

 

本当はミルタザピンなどのくすりに頼ることなく治療することが望まれます。

 

 

肥満の猫はリスク大 〜猫の脂肪肝症と他の病気との関係性〜

 

肥満猫は摂食量低下が数日続くだけで脂肪肝症になるリスクが大幅に上がります

 

また、糖尿病との関係性があるとされています。

 

これは、インスリンの欠乏によって、リポ蛋白リパーゼ(血中リポ蛋白から中性脂肪をとりこむ)の活性を低下させるからだとされています。

 

 

 

猫の脂肪肝症(肝リピドーシス)のポイント

 

・猫において肝細胞に脂肪が蓄積する

・肝酵素値の上昇

・基礎疾患や食欲不振を見逃さない

・栄養支持の重要性

・麻酔をかける前に数日間は輸液療法および栄養支持を行う

・肥満症を改善させることが重要である

 

これらのポイントをもとに、愛猫の食事や体重管理を行いつつ、

指導者や獣医療関係者は飼育管理や医療行為を行うことが勧められます。